溢れるゲーム愛『FAIRY TAIL ダンジョンズ』レビュー。コスパ良しのデッキ構築型ローグライト
溢れるゲーム愛『FAIRY TAIL ダンジョンズ』レビュー。コスパ良しのデッキ構築型ローグライト
ginolaboがデベロッパーを、講談社ゲームクリエイターズラボがパブリッシャーを担い、2024年8月26日(月)よりSteam上で配信が開始された、デッキ構築型ローグライト『FAIRY TAIL ダンジョンズ』を遊んでみたのでレビューをお届けします。
なお、プレイしたゲームのバージョンは1.0.9です。
短いが流石に完成度の高いオリジナルストーリー
本作は、ギルドの地下に突如出現した謎の扉の先に広がる“侵入者の力を奪う不思議なダンジョン”にて、「アーサー」という友人を探しいているエクシードの「ラビ」と出会い、ダンジョンの最奥を目指すことになる、2Dのデッキ構築型ローグライトです。プレイアブルキャラクターの「ナツ」、「ルーシー」、「グレイ」、「エルザ」、「ウェンディ」のほか、FAIRY TAILメンバーや他ギルドのメンバーが登場します。
ゲームはオリジナルのストーリーに沿って進行。Steam上での価格が1,420円(税込)であるのに対して、有名IP作品が題材なためか、ボリューミーなストーリーではありませんが、そこは流石真島先生。短い中で綺麗に世界観を作り上げていました。
またストーリーの中で特別な役割を持って登場するわけではありませんが、ボスキャラとして「デリオラ」や「アクノロギア」なども登場するので、原作ファンはより楽しめると思います。
デッキ構築型ローグライト初心者でも遊びやすいカジュアルさ
本作は基本的に3つのダンジョン「迷宮」「魔封門」「深迷宮」を探索していきます。
迷宮ではプレイアブルキャラクターから1人を選んで探索し、理想的なデッキのビルドを目指していきましょう。ダンジョンは限られたターン数の中での探索が可能です。敵と戦闘するか、宝箱やビックリマーク、露店のマス目を訪れアイテムやカードを獲得するか、焚火のマス目で休息やエンチャントなどを行うかを都度決めて進んでいきます。ダンジョンをクリアすれば探索中にビルドしたデッキは「記憶の魔導書」として最大4つまで保存することが可能です。デッキ構築型ローグライトの経験はあまりないのですが、ビルドしたデッキを複数保存していけるというのは珍しいのではないでしょうか。
デッキが作れたらプレイアブルキャラクターから2人を選び魔封門に挑みましょう。ここでは探索がなく、強力なボスを1体倒すとクリアとなります。
魔封門をクリアできたら、プレイアブルキャラクターから3人を選び深迷宮に挑戦することになります。初回攻略時はそれほど難しくはありませんが、迷宮や魔封門よりも難度は上がるのである程度は戦略的な立ち回りが必要です。また迷宮と魔封門を組み合わせたようなダンジョンではありますが、迷宮のときのようにデッキ構築ができるわけではないので、ビルド不足の場合は迷宮に戻って作り直す必要があります。
ストーリーをクリアしたらこれらのダンジョンの高難易度版を周回し、理想的なビルドを探すパートに入ります。本作はストーリーをクリアしてから本格的なビルドが可能となるので、ここからが楽しいところです。
さて、ゲームは以上のような流れで進行しますが、実際にプレイしてみて、本作はデッキ構築型ローグライト初心者でも遊びやすい作品であると思いました。
例えば、戦闘で負けるとダンジョン探索はそこで終了し、ビルド途中のデッキは消失しますが、それまでの戦果に応じてランクポイントが入手できます。ランクポイントは自動で溜まっていき、一定のポイント数に達するごとにん「アミュレット(装備品)」を解放することが可能です。
迷宮攻略時のみですが、獲得したアミュレットから好きなものを1~4個まで装備可能なので、攻略開始時からキャラクターの能力値を強化したり、強力なマジックカードをデッキに追加した状態でスタートできます。つまり挑戦を重ねるたびに、次回以降の探索や戦闘を有利に進めることができるという、デッキ構築型ローグライトを初めてプレイする方でも遊びやすい設計といえますね。
ドット絵、モーション、エフェクトへのこだわりが光る
FAIRY TAILという有名IPが題材ということもあり、ドット絵を始め、戦闘モーションやエフェクトが価格以上にリッチなことも本作の特徴です。特にモーションに関しては、おそらく2Dのデッキ構築型ローグライト作品では類を見ないほどの完成度となっています。電ファミコゲーマーさんの記事にあるように、真島先生のゲームへの愛と情熱が伺えます。
さいごに
1,420円(税込)という価格を考えるとかなりコスパの良い作品だと思います。メインストーリーこそ短いですがクリア後も楽しめる要素は豊富で、やり込みが楽しいゲームです。
ただ一方で、肝心の、“デッキを構築している感”が薄いようにも思えます。この感覚の言語化が難しいのですが、カードではなく実際は技を集めているということや、各キャラごとの必勝パターンの選択肢があまりなく、デッキの方向性が似通ってしまうことが原因のような気がしています。
またUIに関しても、戦闘中に長押しで確認できるカードの詳細情報は常に表示してくれたらなとか、ビルドしたデッキを最大4つまで保存しておける記憶の魔導書を、見分けやすくするためにアイコンではなく個別の名称を割り当てられたらなとか、挙げればそれなりに不満はあります。
これらを踏まえ総合的に評価すると、カジュアルなデッキ構築型ローグライトで遊びたい方や、コスパの良いゲームを探している方にはおすすめできる作品といった感じです。普段からデッキ構築系で遊ばれている方には物足りないと思います。ただ何度も言うようにとにかく安いので、買って損はしないでしょう。私は楽しめました。